農地売却(田んぼ)の流れと注意点

2025年5月29日 不動産売却基礎知識 任意売却

農地売却は「調査」「方法選択」「許可・登記」の3ステップを守ればスムーズに完了できます。

必要な許可や登記申請はこの順序で行うことで、手戻りや余計なコストを防げますし、相続で得た田んぼを転用して売却した方は、事前に農業委員会へ相談し転用許可を確定させたことで、買主探しから決済まで6か月で終えられました。

3ステップを意識すれば、時間と費用を抑えて安全に農地を現金化できます。

農地売却の全体像|まず知っておくべき3つのポイント

農地を手放したいと感じたら、最初に「全体像」をつかむことが近道です。

農地売却は「宅地売却」と同じように思われがちですが、実際は農地法や都市計画法など専門性の高い法律が絡みます。流れを知らずに進めると、許可が下りず契約が白紙に戻るケースもあります。

農地売却が宅地売却と違う理由

農地売却が宅地売却と決定的に異なるのは、用途制限と買主制限がある点です。

用途制限…農地は原則、耕作目的でしか売買できず、住宅や資材置場へ転用する場合は許可が必須です。
買主制限…農業委員会が「適格農家」と認めた人しか購入できません。
法律の壁…農地法3条・4条・5条のどれに該当するかで手続きが変わります。

例えるなら、農地売却は「運転免許が必要な車の譲渡」、宅地売却は「自転車の譲渡」のように規制のレベルが違います。

農地法・都市計画法など関係法規の概要

農地売却では主に3つの法律が関与します。

農地法の3条(耕作権移転)、4条(転用)、5条(転用+移転)の許可制度。

都市計画法であれば、市街化調整区域では開発許可が必要。一定面積以上の取引には事後届出義務。

これらは「道路交通法・信号機・標識」のように、どれか一つでも無視すると事故(契約無効)が起こります。

「農地のまま売る」か「転用して売る」かの判断基準

2択を決めるポイントは3つあります。

  • 立地…住宅地に近いなら転用メリット大。
  • 面積と形状…狭小地や不整形地は転用費用が割高。
  • 資金と時間…転用は造成・許可でコストと期間がかかります。

売却前の事前準備|調査・書類・専門家手配

売却成功の7割は準備で決まると言われます。まずは「現況」と「登記」を照合し、必要書類を揃え、頼れる専門家チームを編成しましょう。

現況調査と登記情報の照合方法

現況と登記が食い違うと許可が下りません。

  • 公図・地積測量図を法務局で取得し境界杭を確認。
  • 現地写真を撮影し耕作実態を記録。
  • 地目が「田・畑」か登記簿で確認。

この3点を比較し、ズレがあれば土地家屋調査士に相談しましょう。

農業委員会・市町村で確認すべき項目

役所で聞くべきチェックリストは下記です。

  • 農振農用地区域かどうか。
  • 市街化区域/調整区域の区分。
  • 青地・白地の別。
  • 減価償却資産台帳に農業用施設がないか。

病院で言うところのカルテになるので、適切な診断のため必ず控えましょう。

必要書類と取得先一覧

書類は意外と多いですが整理すれば簡単です。

  • 登記事項証明書(法務局)。
  • 公図・地積測量図(法務局)。
  • 固定資産評価証明書(市町村役場)。
  • 印鑑証明書(市町村役場)。
  • 農業委員会提出書類一式(委員会窓口)。

ケース① 農地を農地のまま売却する流れ

買主(農家・農業従事者)の探し方とマッチング手段

買主探しは「人脈」をたどるのが最も良いですが、最近はWEBでの買い取り主を探すのも主流になっています。

試しに、査定してもらうのも大いにありです!

同時進行で進めるのも良いでしょう。

売買契約締結前に確認すべき条件

契約前のチェックは「価格」「境界」「耕作計画」。

  • 価格は近隣の取引事例を参考に公示地価×調整率で算出。
  • 境界は杭の有無を現地確認。
  • 耕作計画(営農計画書)は買主が作成し委員会へ提出。

これらは家を建てる前の「地盤調査」に似て欠かせません。

ケース② 農地転用後に売却する流れ

転用後の売却は高値売却が期待できますが、手続きとコストが増えます。

不動産会社への媒介依頼と査定の受け方

転用売却の成功は不動産会社選びで8割決まります。

  • 農地売却実績を確認(ホームページ・成約事例)。
  • 査定方法…更地想定価額と転用造成費を分けて提示。
  • 媒介契約は「専任媒介」だと販売活動が集中しやすい。

面談では「建築業者ネットワーク」を持つか聞きましょう。

不動産買取マスターは農地・田んぼ・山など多くの買い取り実績があります。

農地法5条許可申請(または届出)のステップ

5条許可は「転用+移転」の二重審査。

  • 用途区分が宅地・駐車場・資材置場か。
  • 開発行為が500㎡超なら都市計画法29条申請が必要。
  • 届出で済む市街化区域なら審査期間が短縮。

行政書士は換地処分非農地証明の経験があるか確認しましょう。

費用・税金の基礎知識

売却益を正しく計算しないと「思わぬ税負担」で後悔します。

仲介手数料・測量費・許可申請費の目安

実費の目安を押さえましょう。

  • 仲介手数料…(売買価格×3%+6万円)×消費税。
  • 測量費…30万〜50万円。
  • 許可申請費…行政書士報酬10万〜20万円。

事前に見積書を取り「総費用シミュレーション」を作ると安心です。

譲渡所得税・住民税・復興特別税の計算方法

譲渡所得税は3要素

  • 譲渡所得=売却価格−取得費−譲渡費用。
  • 税率…長期(5年超)20.315%、短期(5年以内)39.63%。
  • 特例…農地保有継続要件があれば特定農地入替え等特別控除

数字が苦手でも、電卓1つで計算可能です。

登録免許税・印紙税などその他のコスト

忘れがちな税金も確認。

  • 登録免許税…地目変更1,000円/筆、所有権移転は売買価額×1.5%。
  • 印紙税…売買契約書に貼付、1,000万〜5,000万円で2万円。
  • 諸経費…抵当権抹消登記や振込手数料。

家計簿に記入するイメージで、一項目ずつ積み上げましょう。

売却スケジュールと所要期間の目安

時間管理はロードマップが命です。想定期間を把握しておけば「いつ資金が入るか」逆算できます。

農地のまま売却する場合の一般的な期間

農地のままなら平均3〜6カ月。

  • 買主探し…1〜2カ月。
  • 3条許可審査…1〜2カ月。
  • 決済・登記…1カ月。

春の種まき前は買主需要が高く、スピード成約しやすいです。

転用後売却に必要な期間と遅延要因

転用後は6〜12カ月。

  • 許可申請…2〜3カ月。
  • 造成工事…3〜6カ月。
  • 売買契約・決済…1〜3カ月。

遅延要因は雨期の造成停止と隣地境界トラブルが二大要因です。

まとめ

ここまで読めば、農地売却のプロセスが立体的に見えたはずです。

方法選択、許可取得、専門家活用の黄金リレーで、あなたの土地が価値ある資産へと生まれ変わります。

農地売却は「方法選択→許可取得→登記」の3段階。専門家と連携し、手続きの順番と書類の質を守れば、高値売却とスピード決済が同時に実現します。