共有名義不動産の相続トラブル事例5選|よくある原因と売却前に知るべき対策を解説
共有者全員の同意がなければ売却できない、固定資産税の負担でもめる、連絡がとれない相続人がいて手続きが止まるなど、よくある事例は決して他人事ではありません。
たとえば、親から相続した実家を兄弟3人で共有していたところ、1人が売却に反対したために何年も話が進まず、その間に不動産の価値が下がってしまった――このようなケースは実際に数多く起きています。
だからこそ、共有名義の不動産を相続した方や、これから相続が発生しそうな方は、早めにトラブルの原因と対策を知っておくことが大切です。
相続で共有名義になると要注意!トラブルが起きやすい3つの理由
実は、不動産の相続は共有名義トラブルの最大の引き金です。親が亡くなり、兄弟姉妹で不動産を相続したとたん、共有者が一気に増え、誰が何を決めるのかが曖昧になってしまいます。
相続による共有名義は、最初こそ「とりあえず法定相続分で分けておこう」という軽い気持ちで始まります。
相続発生で共有者が一気に増える仕組みとは?知らないと危険なメカニズム
相続が発生すると、亡くなった方の不動産は法定相続人全員に引き継がれます。
ここで重要なのは、遺産分割協議がまとまるまでの間、不動産は相続人全員の「共有状態」になるという点です。
たとえば、お父さんが亡くなって実家を残したとします。相続人がお母さんと子ども3人の場合、遺産分割をしなければ、不動産はこの4人の共有名義になります。ここまでは4人ですから、まだ話し合いもできるでしょう。
しかし、問題はその先です。
数年後にお母さんも亡くなると、お母さんの持分がさらに子ども3人に相続されます。
さらに子どもの一人が亡くなれば、その持分は配偶者や孫に引き継がれます。
こうして、当初は2人だった共有者が、あっという間に5人、10人と増えていくのです。
この仕組みをまとめると、次のようになります。
- 遺産分割協議がまとまらないと、不動産は相続人全員の共有状態になる
- 相続が重なるたびに持分が細分化され、共有者の数が加速度的に増える
- 共有者が増えるほど、全員の同意を得ることが難しくなる
- 最終的に「誰が持分を持っているのか分からない」状態に陥るリスクがある
いわば「ネズミ算式」に共有者が増えていく構造です。この状態を放置すればするほど、不動産の売却や活用は遠のいていきます。「うちは大丈夫」と思っている方こそ、早めに対策を考えることが大切です。
相続登記の義務化(2024年4月施行)で変わった!放置するとどうなる?
2024年4月から、相続登記が法律で義務化されました。
これは不動産登記法の改正によるもので、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を行わなければなりません。
正当な理由なく登記を怠った場合、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります。
「でも、今まで登記しなくても問題なかったのでは?」と思われるかもしれません。
確かに、以前は相続登記に期限がなく、何十年も放置されているケースが全国に数多く存在していました。その結果、「所有者不明土地」が日本全体で九州の面積を超えるほど広がり、深刻な社会問題になったのです。
相続登記の義務化は、過去に発生した相続にもさかのぼって適用されます。
つまり、「昔の相続だから関係ない」とは言えません。心当たりのある方は、できるだけ早く法務局や司法書士に相談されることをおすすめします。
世代が変わるたびに権利関係が複雑化する?放置が生む構造的な問題
共有名義の不動産を長期間放置すると、世代を超えて権利関係がどんどん複雑になっていきます。
これは「数次相続(すうじそうぞく)」と呼ばれる現象で、相続が何度も重なることで持分が雪だるま式に細かくなっていく構造的な問題です。
世代を超えた共有名義の問題点をまとめると、、、
- 数次相続が重なると、共有者の人数が数十人規模に膨れ上がることがある
- 面識のない遠い親戚が共有者に含まれ、連絡先すら分からないケースが発生する
- 共有持分を第三者(不動産業者など)に売却されると、見知らぬ他人が共有者になる
- 全員の同意を得ることが事実上不可能になり、「売れない不動産」と化す
こうした状態は、専門家の間で「権利関係の凍結」とも呼ばれます。
一度こうなってしまうと、元の状態に戻すには共有物分割請求などの法的手続きが必要になり、時間も費用も大幅にかかります。大切なのは、問題が小さいうちに早めに手を打つことです。
共有名義不動産でよくあるトラブル事例5選|実際に起きた問題を紹介
ここでは、実務の現場で特に多い5つのトラブル事例を取り上げ、それぞれの原因とリスクをわかりやすくご紹介します。
【事例1】共有者全員の合意が得られず売却できない!意見が割れるケース
共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の合意が必要です。
これは民法の規定で定められた絶対的なルールであり、たとえ99%の共有者が賛成していても、残り1%の方が反対すれば売却は進められません。
よくあるのが、兄弟で実家を相続したケースです。兄は「早く売却して現金化したい」と考えている一方、弟は「思い出のある実家を残したい」と反対する。こうした気持ちのすれ違いは、どちらが正しいという問題ではないだけに、解決が非常に難しいのです。
このケースで起こりがちな問題は、、、
- 共有者の一人でも反対すれば、不動産全体の売却は法的に不可能
- 話し合いが長引く間に、不動産の市場価値が下落するリスクがある
- 自分の持分だけを売却することは可能だが、買い手が見つかりにくく、市場価格の5〜7割程度に下がる傾向がある
- 膠着状態が続くと、最終的に「共有物分割請求訴訟」という裁判に発展するケースもある
売却のタイミングは不動産の価値に直結します。
「そのうち話がまとまるだろう」と先延ばしにした結果、最適な売却時期を逃してしまうことは少なくありません。
【事例2】固定資産税・維持管理費の負担でもめる!お金のトラブル
共有名義の不動産では、固定資産税や維持管理費の負担をめぐるトラブルが頻繁に発生します。
法律上、固定資産税は共有者全員に「連帯納税義務」があり、全員が全額の支払い義務を負っています。
しかし実際には、納税通知書は代表者一人に届くため、代表者が全額を立て替えて支払うケースがほとんどです。
問題は、その後の精算です。
代表者が他の共有者に対して「あなたの分を払ってください」と請求しても、なかなか支払ってもらえないことがあります
これが積み重なると、金銭的な不満だけでなく、人間関係そのものが壊れてしまうのです。
費用負担のトラブルでよく見られるパターンは、、、
- 代表者が毎年全額を立て替えているが、他の共有者が支払いに応じない
- 「求償権(きゅうしょうけん)」を行使して法的に請求しようとしても、関係悪化を恐れて踏み出せない
- 立て替え分の請求を放置していると、時効(民法上は原則5年)により請求権を失うリスクがある
- 修繕費やリフォーム費用の負担割合でも意見が対立しやすい
こうしたトラブルを防ぐためには、費用負担のルールを事前に文書で取り決めておくことが不可欠です。
「支払い期日」「金額」「振込記録の共有方法」などを明確にしておくだけで、後々の揉めごとを大幅に減らすことができます。
【事例3】疎遠な相続人や連絡がとれない共有者がいる!手続き停滞のケース
共有名義のトラブルで意外と多いのが、「共有者と連絡がとれない」という問題です。
相続を重ねるうちに、共有者の中に長年疎遠になっていた親戚や、遠方に住んでいて所在が不明な方が含まれるケースは珍しくありません。
共有不動産の売却や改築には全員の同意が必要ですから、一人でも連絡がとれないと手続きが完全にストップしてしまいます。
たとえるなら、クラス全員の署名が必要な書類で、一人だけ転校してしまい連絡先が分からない状態と同じです。
連絡不通が引き起こす問題をまとめると、次のとおりです。
- 所在不明の共有者がいると、売却に必要な全員の合意を得ることができない
- 戸籍調査や住民票の追跡で共有者を探す必要があり、時間と費用がかかる
- それでも見つからない場合は、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てる必要がある
- 手続きが数か月〜1年以上かかることもあり、売却チャンスを逃す大きな原因になる
連絡がとれない共有者がいる場合、個人で対応するのは非常に困難です。
【事例4】知らない間に共有持分を第三者に売却された!想定外のリスク
あまり知られていませんが、共有者は自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なく自由に売却できます。
つまり、ある日突然、見知らぬ第三者が共有者として名を連ねるという事態が起こり得るのです。
これは多くの方にとって衝撃的な事実でしょう。
実際、共有持分の買取を専門にする不動産業者が存在しており、資金に困った共有者がこうした業者に持分を売却するケースが増えています。
第三者に持分を売却された場合に起こる問題は、以下のとおりです。
- 面識のない第三者(多くは不動産業者)が共有者に加わる
- 業者から他の共有者に対して、持分の買取や共有物分割請求を迫られることがある
- 交渉のプロである業者相手に、一般の方が対等に話し合うのは非常に難しい
- 最終的に、相場より安い価格で持分を手放さざるを得なくなるリスクがある
このトラブルを防ぐには、共有者間で「持分を第三者に売らない」という取り決めを事前にしておくことが有効です。
また、資金面で困っている共有者がいる場合は、他の共有者が持分を買い取るなどの方法で、第三者の介入を未然に防ぐことが大切です。
【事例5】感情的な対立で話し合いが進まない!人間関係のこじれ
共有名義のトラブルの中でも、最も解決が難しいのが感情的な対立です。
もともとは仲の良い家族や親族だったのに、相続をきっかけに関係が悪化してしまうケースは非常に多くあります。
- 「お前は親の介護を全然しなかったのに、不動産だけは欲しいのか」
- 「自分のほうが多く貢献したのだから、もっと多くもらうべきだ」
こうした感情のぶつかり合いは、不動産の価値とは関係のない部分で議論が紛糾し、話し合い自体ができなくなる原因になります。
感情的対立がもたらすリスク
- 過去の不満や恨みが表面化し、不動産の問題とは別の次元で対立が深まる
- 当事者同士では冷静な話し合いができず、何年も膠着状態が続く
- 放置している間に固定資産税や維持管理費が積み重なり、経済的な損失が拡大する
- 最終的に弁護士を立てての調停や訴訟に発展し、時間と費用がかさむ
感情の問題は、当事者だけで解決しようとするほどこじれやすいものです。第三者の専門家(弁護士や不動産会社)に間に入ってもらうことで、感情と法律の問題を切り分け、建設的な話し合いの場をつくることができます。
「身内だから自分たちで解決しよう」という考えが、かえって問題を長引かせることがあるのです。
共有名義の相続トラブルを防ぐ!売却前にやるべき4つの対応策
ここまで見てきたように、共有名義の不動産は放置すればするほどトラブルが大きくなります。
しかし、逆に言えば、事前にしっかりと対策を取っておけば、多くの問題は防ぐことができるのです。
大切なのは、「問題が起きてから対処する」のではなく、「問題が起きる前に備える」という姿勢です。
ここでは、共有名義不動産の売却や管理をスムーズに進めるために、ぜひ検討していただきたい4つの基本的な対応策をご紹介します。
最初の一歩!登記事項証明書で共有者全員を正確に把握する方法
共有名義のトラブルを解決するための第一歩は、「今、誰が共有者なのか」を正確に把握することです。
意外に思われるかもしれませんが、自分の不動産の共有者を正確に知らない方は少なくありません。
共有者を確認するために必要なのが「登記事項証明書(とうきじこうしょうめいしょ)」です。
これは法務局で取得できる公的な書類で、不動産の所有者や持分割合、抵当権などの権利関係がすべて記載されています。いわば不動産の「戸籍謄本」のようなものです。
共有者の全体像を把握することで、その後の話し合いや手続きの計画が立てやすくなります。
何かを始める前に、まず登記事項証明書を取得して現状を確認することを強くおすすめします。
単独名義にすれば解決!持分整理・名義変更を進める具体的な方法
共有名義のトラブルを根本的に解決する方法のひとつが、「持分整理」や「名義変更」によって不動産を単独名義にすることです。共有者が一人になれば、売却も活用も自分だけの判断で進められるようになります。
単独名義化には、いくつかの方法があります。
代表的なのは、他の共有者から持分を買い取る方法です。
たとえば、兄弟3人で3分の1ずつ共有している不動産の場合、一人が他の2人の持分を適正価格で買い取ることで、単独名義に変更できます。
単独名義化は、共有者全員が納得できる条件で進めることが成功の鍵です。
金額面でも手続き面でも専門家のサポートを受けながら、丁寧に進めていきましょう。
裁判沙汰を避けたい!共有物分割請求や調停の前に話し合いで解決するコツ
共有名義のトラブルが深刻になると、最終的には「共有物分割請求」という法的手続きに発展する可能性があります。
これは裁判所に対して「共有状態を解消してほしい」と申し立てる手続きで、調停や訴訟にまで至ることがあります。
しかし、裁判は時間も費用もかかりますし、何より家族や親族との関係を決定的に壊してしまうリスクがあります。できる限り、話し合いの段階で解決することが理想です。
共有物分割請求は、共有者であれば誰でも、いつでも行使できる権利です。
つまり、他の共有者からいつ請求されてもおかしくないということです。
だからこそ、請求されてから慌てるのではなく、自分から積極的に話し合いの場を設けることが大切なのです。
見落とし注意!贈与税の課税リスクを避けるための適正価格での持分取得
共有者から持分を買い取って単独名義にする際、特に気をつけなければならないのが「贈与税」の問題です。
身内同士の取引だからといって、極端に安い価格で持分を譲り受けると、税務署から「実質的な贈与」とみなされ、贈与税が課税されてしまう可能性があります。
これは税務の世界で「みなし贈与(低額譲渡)」と呼ばれるもので、時価と実際の取引価格の差額に対して贈与税がかかる仕組みです。
たとえば、時価1,000万円の持分を200万円で譲り受けた場合、差額の800万円が贈与とみなされ、高額な贈与税が発生するリスクがあります。
「家族だから安くしてあげよう」という善意が、結果的に大きな税負担を招くことがあります。
感情と税金は別の話です。持分の取得は、必ず適正な価格で、証拠を残しながら進めるようにしましょう。
まとめ
共有名義の不動産は、相続をきっかけにさまざまなトラブルが発生しやすく、放置すればするほど問題が深刻化します。
共有者全員の合意が必要な売却のハードル、固定資産税の負担をめぐる金銭トラブル、連絡のとれない共有者の存在、第三者への持分売却、そして感情的な対立。
これらの問題は、いずれも「早い段階で対策を取っていれば防げたケース」が大半です。
まず登記事項証明書で共有者を正確に把握し、持分整理や名義変更の可能性を検討してみてください。
話し合いが難しい場合は、裁判に発展する前に専門家の力を借りることが重要です。
また、持分の売買を行う際は、贈与税の課税リスクを避けるために適正価格での取引を心がけましょう。
共有名義の不動産で悩んでいる方にとって、最も大切なことは「今すぐ行動を始めること」です。
問題が大きくなる前に、まずは信頼できる不動産会社や司法書士、弁護士に相談してみてください。
小さな一歩が、大きなトラブルを防ぐ最善の方法です。