名義変更していない共有不動産は売却できる?放置リスクと正しい手続きを解説

更新日: 2026年2月25日 任意売却

結論からお伝えすると、名義変更をしていない共有不動産は、原則として売却できません。

その理由は、不動産の売買では「登記簿に記載された名義人」が売主として認められる仕組みになっているからです。

たとえ実際に住んでいたり、口約束で持分をもらっていたとしても、登記上の名義が自分でなければ、法的に売却する権利がないと判断されてしまいます。

たとえば、亡くなった親の名義のまま放置しているケースでは、相続登記を済ませなければ売却手続きに進むことすらできません。さらに2024年4月からは相続登記が義務化され、放置すると過料(罰金)が科されるリスクもあります。

つまり、共有不動産の売却を考えるなら、まず「登記の名義がどうなっているか」を確認することが最初の一歩です。

名義変更していない共有不動産は売却できるのか?結論から解説

原則:登記名義人でなければ売却はできない

結論から言うと、登記簿に名前が載っていない人は、不動産を売ることができません。

これが日本の不動産取引における大原則です。

不動産の売買では、必ず「登記簿に書かれた名義人=売主」であることが求められます。

たとえば、お父さんの名義になっているマンションを、子どもが勝手に売ることはできません。

売買契約の場には司法書士が立ち会い、登記簿の名義人と売主が一致しているかを確認します。

一致していなければ、契約そのものが成立しないのです。

スマホの契約と似ています。契約者本人でなければ解約できないのと同じように、不動産も「登記上の持ち主」でないと売れない仕組みになっています。

例外的に名義変更なしで売却できるケースはあるのか?

ごくまれに、名義変更をせずに売却できるケースも存在します。

ただし、かなり限定的です。

たとえば、登記名義人であるお父さんが存命で、本人が直接売買契約に参加する場合。

この場合は、名義変更の必要はありません。

なぜなら、登記上の名義人がそのまま売主として手続きできるからです。

また、名義人本人が委任状を作成し、代理人に売却を任せる方法もあります。

ただし、委任状には実印と印鑑証明書が必要であり、名義人の意思確認が厳しくチェックされます。

つまり「名義人本人が関与できる状態」であれば、名義変更なしでも売却の道はあります。

しかし、名義人が亡くなっている場合や意思表示ができない場合は、この方法は使えません。

「事実上の所有者」と「登記上の所有者」の違いとは

ここで多くの方が混乱するのが、「実際に住んでいる人」と「登記簿に名前がある人」の違い。

不動産の世界では、どれだけ長く住んでいても、登記簿に名前がなければ「所有者」とは認められません。

法律的には、登記されている情報がすべての判断基準になります。

たとえるなら、銀行の口座と同じです。

いくら「このお金は自分のものだ」と主張しても、口座の名義人でなければ引き出すことはできません。

不動産も同じで、「登記簿の名前」がすべてなのです。


  • 事実上の所有者:実際に住んでいる人、お金を払った人など
  • 登記上の所有者:法務局の登記簿に名前が記載されている人
  • 売却できるのは「登記上の所有者」のみ

口約束で「この家はあなたにあげる」と言われていても、登記が変わっていなければ法的な効力はありません。

売却を考えるなら、まず登記簿の名義を確認することが最優先です。

そもそも不動産の「名義変更」とは?

不動産登記簿(登記記録)の役割と仕組み

不動産登記簿とは、土地や建物の「戸籍」のようなものです。

法務局が管理しており、その不動産が誰のものか、どんな権利がついているかが記録されています。

登記簿には、所有者の氏名・住所はもちろん、住宅ローンなどの抵当権の情報も載っています。

不動産の売買では、この登記簿の内容をもとに取引が進められます。

つまり、登記簿は不動産取引における「公式な証明書」です。ここに書かれている名前が、法的に認められた所有者ということになります。

名義変更が必要になる代表的な3つの場面

名義変更は、不動産の持ち主が変わったときに必要な手続きです。

代表的な場面は以下の3つです。

1つ目は「相続」です。親が亡くなり、子どもが不動産を引き継ぐ場合、親の名義から子どもの名義に変更する必要があります。これを「相続登記」と呼びます。

2つ目は「離婚」です。夫婦共有名義の不動産を、離婚後にどちらか一方の名義にする場合も名義変更が必要です。

3つ目は「贈与や売買」です。親から子へ不動産を生前贈与したり、第三者に売却した場合にも名義を変えなければなりません。

  • 相続:親が亡くなり子が引き継ぐとき
  • 離婚:夫婦の共有名義を一方に変更するとき
  • 贈与・売買:所有権が別の人に移ったとき

どのケースでも、名義を変えなければ「新しい持ち主」として認められません。

早めの手続きが大切です。

2024年4月から相続登記が義務化された背景

2024年4月の法改正により、相続登記は「任意」から「義務」に変わりました。

相続の発生を知った日から3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料(罰金のようなもの)が科される可能性があります。

なぜ義務化されたのか、、、

それは、名義変更されない不動産が全国的に増え、大きな社会問題になっていたからです。

登記が放置されると「所有者不明土地」が生まれます。

誰のものかわからない土地は、再開発や災害復興の妨げになります。

国土交通省の調査では、所有者不明の土地が日本全体の約24%にのぼるとも言われています。

こうした問題を解決するために、法律で相続登記を義務づけることになったのです。

すでに相続が発生している方も対象となるため、早めの対応が求められています。

名義変更が必要になる具体的なケース一覧

被相続人(故人)の名義のまま放置しているケース

最も多いのが、亡くなった方の名義のまま不動産を放置しているケースです。

たとえば、お父さんが10年前に亡くなったのに、登記簿の名義がお父さんのままになっている場合です。

この状態では、誰も売却手続きを進めることができません。

売却するには、まず相続登記を行い、相続人の誰かに名義を移す必要があります。

相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行い、全員が合意したうえで登記を変更します。

「面倒だから後でいいや」と放置する方が多いですが、時間が経つほど手続きが複雑になるため、早めの対応が重要です。

共有者の一部がすでに亡くなっているケース

共有名義の不動産で、共有者の一人がすでに亡くなっている場合も名義変更が必要です。

たとえば、兄弟3人で共有していた不動産で、兄が亡くなった場合を考えてみましょう。

兄の持分は、兄の配偶者や子どもに相続されます。つまり、共有者の顔ぶれが変わるのです。

この場合、亡くなった兄の相続登記を済ませないと、不動産全体の売却ができません。

共有不動産の売却には全員の同意が必要なため、「誰が共有者なのか」が登記上はっきりしていないと手続きが止まってしまいます。

親名義の不動産を子が売却したいケース

「親の名義だけど、自分が住んでいるから売れるだろう」と考える方がいますが、これは間違いです。

先ほど説明したとおり、登記上の名義人でなければ売却はできません。

親が存命であれば、親本人が売主として契約するか、委任状を作成して子に手続きを任せる必要があります。

もし親がすでに亡くなっている場合は、相続登記で子の名義に変更してからでないと売却できません。

親が認知症などで判断能力が低下している場合は、成年後見制度を利用する必要が出てくることもあります。

いずれにしても「住んでいる=売れる」ではないことを覚えておきましょう。

離婚・贈与などで持分移転が発生したケース

離婚によって共有不動産の持分を譲り受けた場合も、名義変更が必要です。

たとえば、夫婦でマンションを半分ずつ共有していたとします。

離婚の際に「マンションは妻が引き取る」と取り決めても、登記を変更しなければ夫の名義は残ったままです。

この状態で妻がマンションを売ろうとしても、登記上は夫も共有者のため、夫の協力がなければ売却できません。

離婚後に元配偶者と連絡が取れなくなるケースも多く、トラブルの原因になります。

贈与の場合も同様です。

贈与を受けたら速やかに名義変更を行い、登記簿の内容を実態に合わせることが大切です。

名義変更せずに放置するとどうなる?5つのリスク

1.売却手続きが進められず機会損失が生じる

名義変更をしていないと、いざ「売りたい」と思ったときにすぐ動けません。

不動産市場には「売り時」があります。

相場が高いタイミングで売却できれば大きな利益になりますが、名義変更に数週間〜数ヶ月かかる場合もあります。

その間に相場が下がれば、本来得られたはずの利益を失うことになります。

急にお金が必要になったときも同じです。

借金の返済や医療費の支払いなど、急いで現金が必要な場面で「名義変更が終わっていないから売れない」という事態は避けたいものです。

2.買主が住宅ローン審査に通らず取引不成立になる

登記簿の名義が古いままだと、買主にも悪影響を及ぼします。

住宅ローンを組んで不動産を購入する買主は、銀行から融資審査を受けます。

このとき、登記簿の内容に不備があると、銀行が融資を認めないことがあります。

結果として、現金一括で買える投資家などに限定されてしまい、売却価格が相場より大幅に下がる可能性があります。登記が整っていないだけで、数百万円の損につながることもあるのです。

3.相続人が増え続けて権利関係が複雑化する

名義変更を放置している間にも、時間は流れます。そして、時間が経つほど問題は大きくなります。

たとえば、親が亡くなったまま登記を放置し、さらにその子(孫世代)にも相続が発生すると、共有者がどんどん増えていきます。

最初は兄弟2人の問題だったのに、気づけば10人以上の相続人が関わっている、ということも珍しくありません。

相続人が増えれば、全員の同意を得ることが難しくなります。

連絡が取れない人、海外在住の人、認知症の人がいれば、手続きはさらに困難を極めます。

4.過料(罰金)が科される可能性がある

2024年4月から相続登記が義務化されたことにより、正当な理由なく登記を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。

この義務化は、2024年4月以前に発生した相続にも適用されます。

つまり、「昔のことだから関係ない」とは言えません。

すぐに罰金が来るわけではありませんが、法務局からの通知を無視し続けると、過料の対象になり得ます。

法律で決められた以上、放置はリスクでしかありません。

5.固定資産税や管理費の負担トラブルに発展する

名義変更をしていなくても、固定資産税は毎年発生します。

登記上の名義人が亡くなっている場合、自治体は相続人に納税通知書を送ります。

しかし、誰がいくら負担するかが決まっていないと、親族間で「なぜ自分が払わなければいけないのか」という争いが起こりがちです。

マンションの場合は管理費や修繕積立金の支払いも同様です。

誰が払うかを決めないまま放置すると、滞納が発生し、管理組合から法的措置を取られることもあります。

登記を整理し、負担者を明確にすることが大切です。

共有持分だけを売却する方法もある?

自分の持分のみを売却する場合の条件と注意点

共有不動産の売却には全員の同意が必要ですが、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なしに売却できます。

これは法律で認められている権利です。

ただし、注意点もあります。持分だけの売却は、買主にとってメリットが少ないため、一般の個人が買うことはほとんどありません。結果として、不動産全体を売却するよりも大幅に安い価格になるケースが多いです。

また、持分を第三者に売却すると、残った共有者と新しい持分の持ち主の間でトラブルが発生する可能性があります。売却前に、他の共有者と十分に話し合うことをおすすめします。

共有持分の買取を専門とする業者の活用法

共有持分の売却先として、専門の買取業者を利用する方法があります。

一般の不動産会社では共有持分の取り扱いを断られることも多いですが、持分買取を専門とする業者であればスムーズに対応してもらえます。

査定から買取までのスピードが速く、最短数日で現金化できるケースもあります。

まとめ

名義変更をしていない共有不動産は、原則として売却できません。

不動産の売買では「登記簿の名義人=売主」であることが絶対条件だからです。

とくに相続が発生しているのに名義変更を放置していると、売却不能になるだけでなく、相続人の増加や過料のリスクなど、問題がどんどん大きくなっていきます。

2024年4月の法改正で相続登記が義務化された今、放置するメリットは一つもありません。

売却を少しでも考えているなら、まずは法務局で登記簿の内容を確認しましょう。

手続きに不安がある方は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。登記の整理は、不動産を売却するための最初の一歩です。