相続した別荘を売却する際のボーダーラインと手引き

更新日: 2025年10月3日 不動産売却基礎知識

相続で突然「別荘」を引き継いだとき、どうすればよいのか悩む人はとても多いです。

実際に利用する予定が少ないなら「売却」した方が得な場合もありますし、思い出や資産価値を大切にしたいなら「所有」する方がメリットになることもあります。つまり、別荘の相続は「売るか、持ち続けるか」を冷静に判断することがとても大切です。

なぜなら、別荘は維持管理や税金などのお金がかかる一方で、資産や家族の拠点として役立つ可能性もあるからです。

たとえば、利用しないのに固定資産税や管理費を払い続けると「負動産」になりかねませんが、人気エリアの別荘を貸し出せば副収入を得ることもできます。

まとめると、相続した別荘をどうするかは「自分や家族のライフスタイル」「維持できる費用」「資産としての活用方法」を踏まえて決めるのが正解です。

別荘を相続したらまず確認すべきこと

別荘を相続すると、嬉しい気持ちと同時に「どう扱えばいいのか」という不安が生まれます。

特に別荘は日常的に使うものではないため、相続後すぐに考えるべき確認事項がいくつかあります。これを見落とすと、後々トラブルや余計な費用が発生してしまうので注意が必要です。

相続登記の義務化について

まず最初に確認すべきは「相続登記」です。

2024年4月から相続登記は義務化され、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料(罰金)を科されることがあります。

別荘を相続したら名義変更を行うことは避けて通れません。登記を怠ると、将来的に売却も貸出もできず、資産価値が事実上ゼロになる危険性があります。

例えるなら、相続登記をしない別荘は「名義がない自転車」のようなものです。持っていても自由に使えず、他人に売ることもできません。まずは登記を済ませることが第一歩です。

固定資産税や維持費の把握

次に確認すべきは、別荘にかかる「お金」です。

別荘を持ち続ける限り、固定資産税や都市計画税が毎年かかります。

また、リゾート地の別荘は管理組合がある場合も多く、管理費や修繕積立金が加わることもあります。

利用頻度が少ない場合でも、これらの費用は必ず発生するため、負担を計算しておく必要があります。


例えば、年間の管理費が20万円、税金が10万円かかる別荘を年に1回しか使わないとすると、1泊あたり数万円以上のコストになる計算です。

この数字を冷静に見ることが重要です。


利用予定やライフスタイルの確認

最後に、自分や家族のライフスタイルに合うかどうかを考えることが必要です。

「せっかくの別荘だから…」と維持しても、実際には年に1〜2回しか使わないケースが多く、その場合はコストに見合わないこともあります。

逆に、テレワークや長期滞在を考えているなら、所有するメリットが大きくなります。

例えるなら、別荘は「高級ジムの会員権」のようなものです。通わなければ損をしますし、活用できれば大きな価値を生みます。自分の生活に合っているかを見極めることが大切です。

ライフスタイルに合わないと「負動産」になりかねないため、利用頻度をシミュレーションして判断しましょう。

相続した別荘を売却するメリット

別荘を売却する最大のメリットは「負担から解放される」ことです。

実際に利用しないのに維持するのは大きなコストと手間がかかります。

売却することで現金化でき、新しい資産形成や生活資金に活かせる可能性があります。

維持管理の負担から解放される

別荘の大きな悩みは「維持管理」です。

空き家状態が続くと、掃除や修繕の手間が増え、害虫やカビの問題も出てきます。遠方にある場合はなおさら管理が大変です。

例えば、毎年5回以上も別荘に通って草刈りや掃除をしている方がいますが、実際には滞在は数日だけ。これでは労力とコストばかりかかってしまいます。

売却すれば清掃や修繕の手間、遠方管理のストレスから完全に解放されます。

税金や維持コストを削減できる

別荘を所有している限り、利用していなくても税金や維持費がかかります。

売却すればこれらのコストをゼロにできます。余ったお金を生活費や資産運用に回すことができるのも大きなメリットです。

  • 固定資産税や都市計画税
  • リゾート管理費や修繕積立金
  • 水道光熱費や清掃費用

例えば、年間で30万円以上の維持費を10年間払い続ければ300万円以上の出費です。売却すればこの負担を一気に解消できます。

売却することで長期的な固定費を削減し、家計にゆとりを生み出せます。

売却益を資産形成や生活資金に活用できる

別荘を売却すると、その売却益を自由に使えます。老後の生活資金、教育費、リフォーム資金など、人生の大切な場面で役立ちます。

資産を現金化することで流動性が増し、将来の安心につながります。

  • 相続税やローンの支払いに充てる
  • 子どもの教育費や留学費に使う
  • 老後の生活資金や医療費に備える
  • 新たな投資(株式、不動産)に回す

売却益は「死蔵資産」を「活きた資産」に変えるチャンスになります。

相続した別荘を売却するデメリット

売却にはメリットが多い一方で、見落とせないデメリットも存在します。

特に税金や市場価格のリスク、そして資産全体のバランスが崩れる点は注意が必要です。

譲渡所得税や手数料の負担がある

別荘を売却すると「譲渡所得税」や「仲介手数料」が発生します。

思ったより手元に残るお金が少なくなることもあるので注意が必要です。特に譲渡所得税は、売却価格から相続時の評価額や必要経費を差し引いた利益に対して課税される仕組みです。

具体的な負担は

  • 不動産会社への仲介手数料(売却価格の3%+6万円+消費税が一般的)
  • 譲渡所得税(長期・短期で税率が異なる)
  • 司法書士報酬などの諸費用

2,000万円で売却し仲介手数料が70万円かかり、譲渡所得税で200万円かかれば、手元には約1,730万円しか残らない計算になります。

売却時は手数料や税金を考慮し、実際の手取り額を把握して判断しましょう。

市場価格の変動によるリスク

別荘の価格は需要や景気に大きく左右されます。

特にリゾート地の不動産は、季節や観光需要によって相場が変わりやすい特徴があります。

そのため、売却のタイミングを間違えると、大きな損失を抱える可能性があります。

別荘売却のベストなタイミングは秋!?売るのに有利な時期を教えちゃいます!

例えるなら、別荘の売却は「株式投資」に似ています。タイミングを誤れば損失が出ますが、適切な時期なら利益を最大化できます。

売却時期を見極めないと、市場の変動で損をするリスクがあります。

不動産を手放すことで資産バランスが崩れる可能性

不動産は「現物資産」として資産全体のバランスを安定させる役割を持ちます。

売却して現金化すると、資産が流動性に偏り、逆にリスクが高まることもあります。投資先を誤ると資産形成に失敗する恐れもあります。

株式投資に全額を回して不況に直面すれば、別荘を売らずに持っていた方が結果的に資産を守れたというケースもあります。

不動産を売却すると資産の多様性が失われる可能性があるため、全体のバランスを考える必要があります。

別荘を所有すると発生する具体的な負担

「せっかくの別荘だから所有したい」と思っても、現実的には多くの維持コストがかかります。

所有することでどんな負担が生じるのかを理解しておくことが大切です。

固定資産税・都市計画税の負担

別荘を所有している限り、毎年必ず「固定資産税」と「都市計画税」がかかります。これは利用頻度に関係なく課税されるため、ほとんど使っていなくても支払いは発生します。

評価額1,500万円の別荘なら、固定資産税だけで年間15万円程度かかります。

別荘を所有すると税金は必ずかかり、利用しない年でも避けられません。

修繕・メンテナンスにかかる費用

建物は使わなくても劣化します。屋根や外壁は風雨で傷み、内部は湿気でカビが発生することもあります。

修繕費用は高額になりやすく、長期所有では大きな負担になります。

  • 外壁塗装や屋根修繕(数十万円〜数百万円)
  • シロアリやカビ対策の施工
  • 水回りの交換やリフォーム

別荘は使わなくても劣化し、修繕費は必ず発生します。

管理組合やリゾート管理費などのランニングコスト

リゾート地の別荘には管理組合があることが多く、毎月または毎年の管理費が必要です。

これらは施設の維持や共有部分の修繕に使われますが、負担額は意外と大きいです。

  • 管理組合費(月1万円〜3万円程度が一般的)
  • 共有施設の修繕積立金
  • 警備や清掃の委託費用

リゾート管理費や管理組合費は長期的に大きな負担となります。

別荘の相続に関する法改正の影響

近年、不動産の相続に関して大きな法改正がありました。

特に「相続登記の義務化」は別荘所有者にとって非常に重要な変更です。

法務省の相続登記FAQページ

相続登記義務化と過料制度について

2024年4月から、相続登記は義務化されました。

これにより、相続してから3年以内に登記を行わないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料を科される可能性があります。

これは所有者不明土地問題を解決するための措置で、別荘にも同じルールが適用されます。

相続登記は義務化され、違反すれば過料の対象となるため必ず手続きが必要です。

所有者不明土地問題と法改正の背景

全国で「所有者不明の土地」が増加し、社会問題になっています。

管理されない土地は防災や環境保全の面でリスクが高く、地域の発展を妨げる要因となります。この問題を解決するために法改正が行われました。

別荘も放置されれば所有者不明土地の一部になりかねません。

法改正の背景は所有者不明土地問題であり、別荘も例外ではありません。

別荘を売却するのに適したケース

売却は必ずしもマイナスではありません。むしろ状況によっては「売却が最適解」となる場合も多いです。

ここでは、売却を選んだ方が良い典型的なケースを解説します。

利用予定がほとんどない場合

別荘をほとんど使わない場合、売却を検討するのが賢明です。利用頻度が少ないと維持費が無駄になり、建物も劣化します。

例えば年に一度しか行かないのに、年間30万円以上の維持費を払っているなら、そのお金を別の資産に使う方が合理的です。

利用頻度が少ないなら、売却して資金を有効活用するのが最適です。

維持管理が負担になっている場合

管理の負担を「楽しみ」ではなく「ストレス」と感じ始めたら、売却のサインです。

労力や時間を別のことに使った方が有意義です。

高齢になって管理ができず、業者に依頼して年間50万円以上かかる場合、負担を続けるより売却した方が楽になります。

維持管理が負担なら、売却で心身ともに自由を得られます。

需要の高いエリアに所在する場合

別荘が人気のリゾート地や観光地にあるなら、売却はチャンスです。

リモートワークの普及で需要が高まっており、高値で売却できる可能性があります。

例えば軽井沢や箱根の別荘なら、売却市場で高値がつきやすい傾向があります。

需要が高いエリアの別荘は、売却の好機となります。

相続した別荘を売却する際の注意点

売却を決めたら、スムーズに進めるための注意点を押さえておくことが大切です。

ここを間違えると余計な税金やトラブルが発生します。

相続登記を済ませてから売却する

売却には名義変更(相続登記)が必須です。

相続登記をしなければ、不動産会社も売却を進められません。2024年からは義務化されたため、早めの対応が必要です。

譲渡所得税や必要経費の確認

売却益には必ず税金がかかります。

譲渡所得税は大きな負担になるため、事前に税理士に相談することをおすすめします。

  • 譲渡所得税の税率は所有期間で変わる(長期20%、短期39%程度)
  • 必要経費を計上して税負担を軽減できる
  • 確定申告が必要になる

税負担を最小限にするため、事前にシミュレーションが必須です。

不動産会社の選び方に注意する

不動産会社選びで売却価格やスピードは大きく変わります。

特に別荘は一般住宅と異なる市場なので、リゾート地や別荘売却に強い会社を選ぶのが重要です。

別荘に強い不動産会社を選ぶことが、高値売却への近道です。

まとめ

相続した別荘をどうするかは、「売却か所有か」の選択に尽きます。

維持コストやライフスタイルを考慮し、自分にとって最もメリットの大きい選択をすることが大切です。

もし迷った場合は、不動産の専門家や税理士に相談して最適な方法を見つけましょう。