【離婚時の共有名義の家】売却方法と共有名義の解消方法を徹底解説
結論からお伝えすると、離婚時の共有名義の家はできるだけ早く解消・売却するのがおすすめです。
なぜなら、共有名義のまま放置してしまうと、元配偶者との関係が続いたり、住宅ローンの滞納によって競売にかけられたりと、さまざまなトラブルに発展する可能性があるからです。
例えば、離婚後に相手と連絡が取れなくなった場合、家の売却そのものができなくなってしまうケースもあります。
離婚時に共有名義の家を売却する方法とは?基本知識を解説
離婚を考えたとき、「この家、どうしよう…」と不安になる方はとても多いです。
特に夫婦で共有名義になっている家は、売却の手続きが少し複雑になります。
共有名義の不動産とは?仕組みをわかりやすく解説
共有名義とは、ひとつの不動産を複数人で所有している状態のことです。
たとえば、5,000万円の家を夫婦で購入し、それぞれ2,500万円ずつ出し合った場合、持分割合は「夫:50%、妻:50%」となります。
これは、ケーキを半分ずつ分けるイメージに近いですが、不動産の場合は「ここからここまでが夫の分」と物理的に分けることはできません。
あくまで「権利の割合」として登記簿(とうきぼ)に記載されるのがポイントです。
登記簿とは、法務局が管理している不動産の戸籍のようなもので、誰がどれだけの持分を持っているかが公的に記録されています。
共有名義は夫婦に限らず、親子や兄弟で所有するケースもありますが、離婚時には特に大きな問題になりやすいのです。
共有名義の家を売却するには全員の同意が必要
共有名義の家を売却するには、名義人全員の同意が必要です。
これは民法251条で定められた「共有物の変更行為」にあたるためです。
つまり、夫婦のどちらか一方が「売りたい」と思っても、もう一方が「売りたくない」と言えば、売却は成立しません。
- 名義人全員の同意がなければ売買契約を結ぶことができない
- 売却時には名義人全員の実印・印鑑証明書・本人確認書類が必要
- 一人でも反対すると、家全体の売却は原則不可能
離婚の話し合いがこじれている場合、相手が売却に応じてくれないことも珍しくありません。
だからこそ、できるだけ早い段階で売却について話し合っておくことが大切です。
共有持分と所有権の違いを理解しよう
「共有持分」と「所有権」は、似ているようで少し違います。
所有権は、不動産をひとりで完全に所有している権利のことです。自分の判断だけで売却も賃貸も自由にできます。
一方、共有持分は、不動産に対する「自分の取り分」を表す権利です。
たとえるなら、所有権は「自分だけのお財布」、共有持分は「みんなで使う共同のお財布の中の自分の分」のようなイメージです。
共有持分は自分の権利なので、実は単独で売却することも法律上は可能です。
ただし、家全体を売るのとは事情が大きく異なりますので、後ほど詳しく解説します。
離婚後も共有名義のままにしておく6つのデメリット
「離婚したけど、名義変更は面倒だからそのままでいいか…」と思っていませんか?
実は、共有名義を放置しておくと、将来的にとても大きなトラブルに発展する可能性があります。
離婚後も元配偶者とのつながりが続く
離婚したのに、いつまでも元配偶者と連絡を取り続けなければならない…。これは精神的にとてもつらいことです。
共有名義の不動産がある限り、修繕や管理、税金の支払いなどで相手と協議する場面が避けられません。
たとえば、屋根の修理が必要になったとき、「費用をどちらが負担するのか」を話し合わなければなりません。
せっかく新しい生活を始めようとしているのに、不動産が原因で過去の関係に引き戻されてしまうのは、大きなストレスになるでしょう。
固定資産税や管理費などのランニングコストが発生する
不動産は持っているだけでお金がかかります。住んでいなくても固定資産税は毎年必ず発生します。
さらに、マンションであれば管理費や修繕積立金も支払い続ける必要があります。
- 固定資産税:毎年1月1日時点の所有者に課税される
- 都市計画税:市街化区域内の不動産に追加で課税される
- 管理費・修繕積立金:マンションの場合は毎月支払いが必要
共有名義の場合、本来はこれらの費用を持分割合に応じて分担します。
しかし、離婚後に相手が支払いに応じないケースも少なくありません。
結果として、一方だけに負担が集中し、金銭トラブルに発展してしまうこともあるのです。
売却や活用に相手の承諾が必要になる
共有名義のままだと、自分の判断だけでは何もできないというのが大きなデメリットです。
売却はもちろん、誰かに貸したい、リフォームしたい、担保に入れて融資を受けたい…。
こうした行為にはすべて相手の承諾が必要になります。
たとえば、将来新しい事業を始めるために家を担保にしたいと思っても、元配偶者が「ダメ」と言えばそれまでです。
自分の人生なのに、元配偶者の許可がないと前に進めない。
これは想像以上に不自由な状態です。
相続が発生するとさらに複雑化する
共有名義を放置したまま、元配偶者が亡くなるとどうなるでしょうか?
相手の共有持分は、相手側の遺族が相続することになります。
たとえば、元夫が再婚して新しい配偶者と子どもがいた場合、共有持分を相続するのはその新しい家族です。
つまり、まったく面識のない人と不動産を共有する状態になるのです。
こうなると、売却や活用の合意を得るのはさらに困難になります。
相続人が複数いれば、全員の同意が必要になるため、話し合いは一層ややこしくなるでしょう。
調停や訴訟に発展するリスクがある
共有名義の不動産をめぐって話し合いがまとまらない場合、裁判所を通じた手続きに発展する可能性があります。
- 共有物分割調停:裁判所の調停委員が間に入り、合意案を提案してくれる手続き
- 共有物分割訴訟:調停でもまとまらない場合に行われる裁判手続き
訴訟になると、裁判所が「現物分割」「価格賠償(代償分割)」「競売による換価分割」などの方法で強制的に分割を決定します。
裁判には時間もお金もかかりますし、精神的な負担も非常に大きいです。
こうした事態を避けるためにも、早めに共有名義を解消することが重要です。
一方が住宅ローンを滞納すると競売にかけられる
これは共有名義を放置する最も怖いリスクのひとつです。
元配偶者が住宅ローンを滞納し続けると、不動産全体が競売にかけられる可能性があります。
たとえば、離婚後に夫が家を出て妻と子どもが住み続けているケースを考えてみましょう。
夫がローンの返済を怠ると、金融機関は抵当権を行使して家を差し押さえます。
競売が進めば、妻と子どもは強制的に退去させられ、住む場所を失ってしまいます。
自分はきちんと返済しているのに、相手の滞納のせいで家を失う。
そんな理不尽な事態が実際に起こり得るのです。
共有持分だけを売却することはできる?
「相手が売却に同意してくれないなら、自分の持分だけでも売れないの?」
そう考える方も多いでしょう。実は、共有持分だけの売却は法律上可能です。
共有持分は単独で売却が可能
共有持分は、それぞれの共有者が100%の権利を持っている「自分の財産」です。
そのため、他の共有者の同意がなくても、自分の持分だけであれば単独で売却することができます。
たとえるなら、共有名義の家は「シェアハウスの部屋の権利」のようなもの。
自分の部屋の権利は自分で処分できるイメージです。
ただし、共有持分だけを欲しがる一般の買主はほとんどいません。
そのため、買い手は主に共有持分専門の不動産買取業者になることが多いです。
また、市場価格よりも大幅に安くなる傾向があることは、あらかじめ理解しておきましょう。
売却には住宅ローンの完済が原則必要
共有持分を売却する場合でも、原則として住宅ローンの完済が必要です。
なぜなら、住宅ローンが残っている不動産には「抵当権(ていとうけん)」が設定されているからです。
- 抵当権とは、金融機関が融資の担保として不動産に設定する権利のこと
- 抵当権が付いたままでは、不動産の売却は原則できない
- 売却するには、ローンを完済して抵当権を抹消する必要がある
売却代金でローンを完済できる場合は、売却と同時に抵当権を抹消する「同時抹消」という方法が使えます。
住宅ローンが残っている場合は、まず残債額を正確に把握することが第一歩です。
抵当権の設定方法によっては持分のみ売却できるケースもある
「ローンが残っていたら絶対に売れないの?」と思うかもしれませんが、実は例外もあります。
抵当権が共有持分ごとに設定されている場合は、自分の持分だけの抵当権を抹消して売却できる可能性があるのです。
たとえば、夫婦がそれぞれ別々の住宅ローンを組んで、それぞれの持分に抵当権を設定しているケース(いわゆる「ペアローン」)がこれにあたります。
ただし、家全体にひとつの抵当権が設定されている場合は、自分の持分だけの抵当権を抹消することは基本的にできません。
どちらのケースに該当するかは、金融機関や司法書士に確認するのが確実です。
共有持分を売却した後はどうなる?
自分の共有持分を売却すると、買主ともう一方の共有者が新たな共有関係になります。
たとえば、夫婦が50%ずつの持分を持っていて、夫が自分の50%を業者に売却した場合、妻と業者が50%ずつの共有名義となります。
売却した夫は、家に関する権利も義務もすべてなくなり、売却代金を受け取って完全に関係を断つことができます。
一方で、残された妻は見知らぬ業者と共有状態になるため、業者から持分の買取を求められたり、家全体の売却を提案されたりする可能性があります。
共有持分の売却は自分にとっては解決策になりますが、相手にとっては新たな問題の始まりになることも覚えておきましょう。
【住宅ローンなし】共有名義を解消する方法
住宅ローンをすでに完済している場合は、比較的スムーズに共有名義を解消できます。
ここでは、住宅ローンがない場合の2つの解消方法をご紹介します。
一方が相手の持分を買い取って単独名義にする
もっともシンプルな方法が、どちらか一方が相手の持分を買い取る方法です。
たとえば、5,000万円の家を夫婦で50%ずつ共有している場合、夫が妻の持分を買い取るなら2,500万円を支払うことになります。
この方法の最大のメリットは、今の家にそのまま住み続けられることです。
- 子どもの転校を避けたい場合に特に有効
- 住み慣れた環境を維持しながら名義を整理できる
- 不動産の売却活動が不要なので手間がかからない
ただし、持分を買い取る際には「不動産取得税」や「登録免許税」などの税金が発生します。
また、適正価格で取引しないと「みなし贈与」とみなされ、贈与税が課税されるリスクもあります。
トラブルを防ぐためにも、弁護士や税理士に事前相談することをおすすめします。
家を売却して現金を分配する
どちらも家に住み続ける必要がない場合は、家を売却して現金化し、売却代金を分け合う方法が最もスッキリします。
共有名義のまま売却することも可能なので、名義変更の手続きを先にする必要はありません。
たとえば、家が4,000万円で売れた場合、諸費用を差し引いた残りを持分割合に応じて分配します。
50%ずつなら、それぞれ約2,000万円(諸費用控除前)を受け取れる計算です。
この方法は財産分与としても明快で、お互いに納得しやすいのが大きなメリットです。
ただし、売却には仲介手数料(売却価格の3%+6万円+消費税が上限)や譲渡所得税などの費用がかかることも、頭に入れておきましょう。
【住宅ローンあり】共有名義を解消する方法
住宅ローンが残っている場合、共有名義の解消は少しハードルが上がります。
しかし、方法がないわけではありません。
住宅ローンを借り換えて新たに組み直す
共有名義の住宅ローンを解消するために、新たな住宅ローンに借り換える方法があります。
たとえば、夫婦の連帯債務で組んでいたローンを、夫の単独名義のローンに借り換えるイメージです。
これにより、元の共有ローンは完済扱いとなり、妻はローンの返済義務から解放されます。
ただし、借り換えには金融機関の審査があります。
元々2人分の収入で組んでいたローンを1人で引き受けるわけですから、十分な収入や返済能力がなければ審査に通らない可能性が高いです。
借り換え先の金融機関を比較検討し、事前審査を受けてみることをおすすめします。
単独名義に変更する際の注意点
住宅ローンの契約者を夫婦共有から単独に変更する場合、いくつかの注意点があります。
- 不動産の名義変更と住宅ローンの契約者変更はセットで行う必要がある
- 単独名義にする側に十分な収入・返済能力が求められる
- 金融機関の承諾なしに勝手に名義変更をすると、契約違反になる可能性がある
特に注意したいのが、金融機関への無断での名義変更です。
住宅ローンの契約書には「名義変更時は事前に届け出ること」と記載されていることがほとんどです。
無断で変更すると、最悪の場合「期限の利益の喪失」となり、ローンの一括返済を求められることもあります。
必ず金融機関に相談してから手続きを進めましょう。
アンダーローンの場合は売却して一括返済する
アンダーローンとは、家の売却価格が住宅ローンの残債を上回っている状態のことです。
たとえば、ローン残債が2,000万円で家が3,000万円で売れるなら、差額の1,000万円がプラスの財産として残ります。
この場合は、家を売却してローンを完済し、残ったお金を夫婦で分け合うのが最もシンプルな方法です。
売却代金からローン残債と諸費用(仲介手数料・登記費用など)を差し引いた金額が、実質的な財産分与の対象となります。
アンダーローンかどうかを確認するには、金融機関にローン残高を問い合わせたうえで、不動産会社に査定を依頼しましょう。
オーバーローンの場合は任意売却を検討する
オーバーローンとは、アンダーローンの反対で、家の売却価格が住宅ローンの残債を下回っている状態です。
オーバーローンの場合、原則として家を売却することはできません。
しかし、残債と売却価格の差額を自己資金で補填(ほてん)できるなら、売却は可能です。
それも難しい場合は、「任意売却(にんいばいきゃく)」という方法を検討しましょう。
任意売却とは、金融機関の同意を得たうえで、ローンが残った状態でも不動産を売却する方法です。
競売と違い、市場価格に近い金額で売却できるメリットがあります。
ただし、売却後もローンの残債は返済し続ける必要があるため、慎重な判断が求められます。
共有名義を解消するベストなタイミングは離婚前
「共有名義の解消は離婚が成立してからでいいか…」と後回しにしていませんか?
実は、共有名義の解消は離婚前に行うのがベストです。
住宅ローンの残債がある場合は離婚前の売却が安心
住宅ローンが残っている場合、離婚後に売却しようとすると大きなリスクを抱えることになります。
- 離婚後に相手と連絡が取れなくなり、売却手続きが進められなくなる
- 相手がローンを滞納し、家が差し押さえられる可能性がある
- 連帯保証人になっている場合、相手の滞納分を請求されることがある
離婚前であれば、まだ夫婦として協力しやすい環境にあります。
お互いの意思が固まっているうちに、売却を進めてしまうのが賢明です。
「離婚後に何とかしよう」と思っていても、実際には感情的な対立や物理的な距離が原因で、話し合いすら難しくなることが少なくありません。
財産の大部分を住宅が占める場合は現金化しておく
離婚時の財産分与では、夫婦が婚姻中に築いた財産を原則として2分の1ずつ分け合います。
現金や預金なら簡単に半分にできますが、不動産は物理的に半分にすることができません。
たとえば、夫婦の財産が「現金500万円+不動産2,500万円=合計3,000万円」だった場合、不動産を引き継いだ側が2,500万円分の財産を得ることになり、大きな不公平が生じます。
このような場合は、離婚前に不動産を売却して現金化しておくことで、公平な財産分与がしやすくなります。
不動産の評価額をめぐって意見が対立することも多いため、不動産鑑定士による「不動産鑑定評価」を取得しておくと、より客観的な判断ができるでしょう。
まとめ
今回は、離婚時に共有名義の家を売却する方法と、共有名義を解消する具体的な手順について解説しました。
共有名義の家を放置しておくと、元配偶者との関係が続くストレスや、ローン滞納による競売リスク、相続による複雑化など、多くのデメリットが生じます。
共有名義を解消する方法は、住宅ローンの有無によって異なりますが、いずれの場合も離婚前に対処しておくことが大切です。
特に、住宅ローンが残っている場合や、財産の大部分を不動産が占めている場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
弁護士・税理士・不動産会社など、それぞれの専門家の力を借りながら、後悔のない判断をしていきましょう。