空き家を更地にすると固定資産税が最大6倍に跳ね上がる

2025年5月26日 税金

空き家を放置すると、固定資産税が最大6倍に跳ね上がるおそれがあります。

2023年12月の法改正で「管理不全空き家」や「特定空き家」に指定される基準が広がり、状態が悪化した空き家は住宅用地特例の対象外となりやすくなったからです。特例を失うと、土地部分の固定資産税が最大で6倍に増額し、都市計画税も軽減されなくなります。

たとえば、相続した実家を手入れせず2年間放置した結果、屋根の破損や雑草繁茂が進み、市区町村から「管理不全空き家」の指導を受けたケースがあります。指導を無視してさらに放置したところ、年間税額が約6万円から約36万円へと急増したというケースがあります。

空き家に課税される固定資産税・都市計画税の基礎知識

固定資産税と都市計画税は、土地・建物を所有しているだけで毎年必ずかかる「保有コスト」です。

評価額(固定資産課税台帳に登録された価格)に税率を掛けて算出されますが、空き家の場合でも例外なく請求が届きます。

「誰も住んでいないのにお金が出ていくなんて…」と感じる人も多いでしょう。

しかし税法上、所有=潜在的な経済利益とみなされるため、たとえ空き家であっても課税が免除されるわけではありません。さらに都市計画税は街づくりを支える財源で、市街化区域内に土地を持つと追加で負担が生じます。

税負担を正しく理解しないまま放置すると、滞納処分で差し押さえになるリスクもあるため、まずは制度の全体像を押さえましょう。

固定資産税と都市計画税の仕組みと計算方法

固定資産税は標準税率1.4%、都市計画税は0.3%が一般的ですが、自治体によって異なることがあります。

算定の流れや専門用語をおさらいしましょう。

  • 課税標準額=評価額。評価額は「路線価」や「固定資産評価基準書」を用い3年ごとに見直されます。
  • 税額=課税標準額×税率。たとえば評価額1,000万円の家屋なら固定資産税14万円、都市計画税3万円が目安です。
  • 耐用年数や構造で評価額は減少。木造より鉄筋コンクリート造のほうが評価額が高い傾向です。
  • 滞納すると延滞金(年率最大8.8%)が発生し、最終的に「公売」による強制換価が行われます。

住宅用地特例による税額軽減の条件

住宅が建っている土地は「住宅用地特例」により課税標準が最大6分の1まで下がり、大幅な節税効果が得られます。

  • 200㎡以下の部分は固定資産税が課税標準×1/6、200㎡超は×1/3に軽減されます。
  • 都市計画税も同様に1/3(200㎡以下)または2/3(200㎡超)に圧縮されます。
  • 家屋の取り壊しや「特定空き家」指定で住宅用途と認められなくなると特例が即消失します。
  • 登記事項要約書に残る「居宅」表記が要件確認のカギ。用途変更登記を怠ると誤課税の恐れがあります。

適用要件を知らないと損をするため注意が必要です。

固定資産税が最大6倍になる?

2023年12月改正の空家等対策特別措置法により、管理が不十分な空き家は住宅用地特例の対象外となり、土地部分の固定資産税が最大6倍へ跳ね上がるケースが急増しています。

突然の納税通知に驚く前に、どのような状況で増税が発動するのかメカニズムをつかみましょう。

空き家を解体して更地にした場合の影響

「古い家を壊してスッキリさせたい」と考えるのは自然ですが、解体には税務上の落とし穴があります。

  • 解体後は住宅用地特例が消失し、土地の固定資産税が約3〜6倍に増額します。
  • 都市計画税も軽減がなくなり、固定資産税と合わせて年間十数万円の負担増になる事例が多いです。

解体費用(木造1坪あたり約3〜5万円)を支払ったうえで税額上昇が続くため、総コストが膨らみます。

例えば、評価額800万円の土地を更地にすると固定資産税は約11万円→約66万円へ。5年間で275万円の差があります。

「特定空き家」に指定された場合の増税リスク

行政が「倒壊・衛生・景観」面で危険と判断すると、住宅が建ったままでも特例が外れます。

勧告→命令→代執行のプロセスで、勧告段階で特例解除、命令拒否で50万円以下の過料が追加されます。

建物が傾く・屋根瓦が落下・アスベスト飛散などが主な判定要因で、「建築基準法第10条の緊急措置」と同時進行することもあるので要注意。

特定空き家解除には「構造耐力上主要な部分」の補修報告が必要で、専門家による耐震診断を求められる場合があります。

指定後1年放置で延滞金を含め年100万円超負担の例もあり、早期対応が不可欠です。

「管理不全空き家」に指定された場合の増税リスク

外壁の落書きや雑草繁茂など軽微でも、放置が続けば「管理不全」に分類されます。

2023改正で新設された区分で、特定空き家の予備軍として勧告を受けると特例が外れます。

腐朽・破損率20%未満でも対象とされ、見た目の荒廃だけで「景観阻害」とみなされることが増えています。

勧告解除には「管理計画書」の提出が必須で、管理受託契約を結び定期巡回を委託すると実務的にスムーズです。

軽度だからと甘く見ると、翌年度評価でいきなり6倍課税。心理的コストも大きいので要警戒。

「特定空き家」と「管理不全空き家」の判断基準

行政が行う判定は、建築士や自治体職員が現地調査を実施し、法定項目に基づき点数化する「空家判定シート」によって決められます。

自分の空き家が今どの段階にあるのかを把握しておくと、増税や行政代執行を未然に防げます。

行政が行う調査・指導の流れ

指定までのステップを理解すると、改善のタイミングを逃さずに済みます。

  • 現況調査:外観確認と敷地内立ち入り。写真撮影やレーザー距離計測で傾斜角を計測。
  • 指導通知:改善を促す文書。期限は概ね30〜60日で再調査が行われます。
  • 勧告:改善なしの場合。ここで住宅用地特例が外れ、税額が跳ね上がります。

命令違反で行政が解体し費用を所有者に請求してきて、滞納なら「国税徴収法」による強制回収されるおそれがあります。

指定解除までに必要な改善措置

指定を解除するには「安全・衛生・景観」の3視点で点数を下げる必要があります。

  • 構造補強:筋かい補強や屋根葺き替えなど「耐震評点1.0以上」を確保。
  • 防災対策:不燃材料での外壁改修、雨樋交換で漏水を防ぎ腐朽進行を阻止。
  • 環境美化:草刈り・ごみ撤去・外壁塗装で景観得点を改善。
  • 証拠提出:工事完了報告書と写真を自治体に提出し、再調査で判定を受ける。

固定資産税が高くなる前に取るべき管理対策

税額が跳ね上がる前に「管理コスト」と「増税リスク」を天秤に掛け、最小限の投資で空き家を健全な状態に戻すことが大切です。

自力管理が難しい場合は、空き家専門業者や不動産管理会社を活用すると、遠方オーナーでも安心できます。

定期点検・清掃・修繕で維持管理

月に一度の簡易メンテナンスでも、税額6倍を防げると考えれば安い投資と言えます。

屋根・外壁ひび割れ、水道管の凍結破損などをチェック。ドローン点検なら委託費用として3万円前後で可能です。

また、排水溝・雨樋の落ち葉除去、室内換気でカビ発生を予防なども必要になり、シーリング材打ち替えや瓦差し替えで腐朽連鎖を遮断。

点検報告書を残し、行政調査時に提示できるようにするとトラブル回避に有効。

空き家管理サービスを利用するメリット

プロに任せることはコストではなくリスクヘッジです。

見回りを月額5,000円〜1万円で通風・通水・ポスト整理を実施し、管理不全判定を回避する方法

台風・地震後の駆けつけサービスで、倒壊危険を即時確認を行うこともできます。

写真付きのレポートで状態を可視化し金融機関や買主への説明資料にも活用可能になります。

固定資産税を抑える4つの具体的な対策

増税を食い止めるには「空き家からの脱却」が最短ルートです。

ここでは費用対効果の高い4つのアプローチを紹介します。

賃貸に出して空き家状態を解消する

他人に住んでもらえば「住宅用地特例」が復活し、家賃収入も得られます。

水回り交換やクロス貼り替えで「原状回復+α」程度の投資が目安となります。

定期借家契約にすると将来売却もしやすい傾向にあります。また、周辺相場−10%で募集すると比較的早く入居者も見つかるでしょう。

そして、入居者対応を任せると「瑕疵担保責任」の軽減にもつながります。事故物件の場合はかなり有効的です。

お風呂場で亡くなった場合は事故物件扱いになるの?

一度住めば告知義務がなくなるは【嘘】事故物件のロンダリングには注意!

事故物件の告知義務はいつなくなる?売却のコツ

売却して維持コストをゼロにする

「相続時精算課税制度」を使えば、譲渡所得の課税を繰り延べできる場合があります。

時間優先なら不動産買取業者、価格優先なら仲介が一般的で、建物状況調査で瑕疵を開示し高値売却を狙うパターンもあります。

また、撤去費用は買主負担交渉も可能で、長期譲渡なら税率20.315%。特別控除を使えばさらに圧縮できます。

不動産買取マスターでは多くの方から空き家の買い取らせていただいています。

リフォーム・リノベーションで資産価値を向上させる

「耐震基準適合証明書」を取得すれば、住宅ローン控除が利用でき買主の需要を喚起できます。

フルスケルトンで坪単価35〜50万円。部分改修なら10〜15万円で住む場合もあります。

長期優良住宅化リフォーム推進事業で最大250万円補助を貰う形でのリフォームなども行えます。また、断熱等級4以上で「ZEH基準」達成、将来価値が下がりにくいなどと言った細かな技もあります。

最近では、古民家再生で宿泊施設に転用するなど収益化の可能性ですが、手間や違ったリスクが増える可能性もあります。

相続登記・名義変更でトラブルを防ぐ

2024年4月から相続登記の申請義務化がスタートし、怠ると10万円以下の過料対象です。

  • 登記識別情報(権利証)を紛失している場合は事前通知制度で対応。
  • 共有者不在:法定相続情報一覧図を作成し、手続きを一本化するとスムーズ。
  • 家族信託:受託者が柔軟に売却・修繕を行えるため、認知症リスク対策にも有効。

ケース別シミュレーションで比較する税負担

数字で比較すると、管理コストと税負担のバランスが見えてきます。

ここでは代表的なケースを挙げ、どの選択肢が最も経済的かを検証します。

言わば、燃費の悪い車を乗り続けるか、新車に買い替えるかを試算するイメージです。

更地・特定空き家・管理不全空き家の税額比較

評価額1,000万円・200㎡の土地を想定した試算。

  • 住宅用地特例あり:固定資産税約2万3,000円+都市計画税約6,000円。
  • 管理不全空き家:固定資産税約13万8,000円+都市計画税約2万円。
  • 特定空き家:固定資産税約13万8,000円+都市計画税約2万円+過料最大50万円。
  • 更地:固定資産税約13万8,000円+都市計画税約4万円。5年で総額100万円超の差。

市街化区域と市街化調整区域による課税差

所在地によって都市計画税の有無が変わるため、同じ評価額でも負担が大きく異なります。

  • 市街化区域:都市計画税課税。住環境が整うが税負担増。
  • 市街化調整区域:都市計画税なし。ただし建築制限が厳しく流通性が低い。
  • 例:調整区域にある空き家を賃貸→特例適用で年間10万円以上節税できた事例。
  • 自治体独自の減免制度:過疎地域では税額控除や補助金がある場合も要チェック。

まとめ

空き家の固定資産税は、住宅用地特例の有無で天と地ほど差がつきます。管理を怠れば最大6倍、逆に適切な活用をすれば軽減措置を維持できます。

賃貸・売却・リフォームなど選択肢は多岐にわたるため、資金計画と家族の事情に合わせて最良の道を選びましょう。